REWで自室を測定する手順
他のガイドは測定済みのデータがある前提で始まる。この記事はその測定データを手に入れるまでを扱う。
読了 約8分 · 更新 2026-08-19
測定に必要なもの
必要なものは二つ。校正データのある測定用マイクと、REW本体である。ソフトは無料なので、購入が必要なのはマイクだけになる。
- 測定用マイク。miniDSPのUMIK-1が標準的な選択肢とされる。USB接続なのでオーディオインターフェースもマイクプリも不要で、しかも個体ごとの校正ファイルがシリアル番号に紐づいて配布される。XLRのマイクは安価だがファンタム電源付きのインターフェースが要り、校正データも個体別ではなく機種共通のものが一般的である。
- REW本体。roomeqwizard.comから入手できる。無料で、Windows、macOS、Linux版がある。Javaアプリケーションなので、初回起動時にランタイムの導入を求められることがある。
- 三脚またはマイクスタンド。手持ちやソファの肘掛けでは代用にならない。
最初のスイープの前に設定する
ここでの五分が、測定が意味を持つかどうかを決める。この記事の最後に挙げる六つのミスのうち四つは、この工程で発生する。
- 1.入出力デバイスを選ぶ。サウンドカード設定で、入力を測定用マイク、出力をアンプにつながっている機器にする。一度小音量でスイープを流し、測定したいスピーカーから音が出ることを確認する。
- 2.校正ファイルを読み込む。マイク本体に印字されたシリアル番号でminiDSPから入手し、マイクとメーターの設定画面で読み込む。校正ファイルなしのUMIK-1は、帯域の上端と下端で数デシベルずれた値を出す。
- 3.角度の合ったファイルを選ぶ。UMIK-1には0度用と90度用の二種類がある。マイクを天井に向けるなら90度用である。取り違えると最高域の二オクターブに広い誤差が乗り、高域の問題そのものに見えてしまう。
- 4.レベルを合わせる。レベルチェックを実行し、スイープが-12dBFS前後になるようにする。小さすぎると低域がノイズに埋もれ、大きすぎるとクリップして、実在しない情報が歪みとして現れる。
- 5.騒音計があればSPLの校正もしておく。このサイトの解析は目標曲線に合わせてから比較するため必須ではないが、常識的な音量で測れているかの判断材料にはなる。
マイクを置く場所
マイクの位置は、ソフト側のどの設定よりも結果を左右する。測定が記述するのはカプセルがあった一点の空間なので、頭のある位置に置く。
- リスニングポジションの、耳の高さ。椅子からは立って離れる。ソファの背もたれの上でもテーブルの上でもない。
- スタンドに立て、90度用の校正ファイルを読み込んだなら天井に向ける。手で持つと、腕と体がカプセルから20cmの位置にある反射面になる。
- クッションやヘッドレストから離す。マイクのすぐ後ろに柔らかい面があると高域が吸われ、それを部屋の特性だと読み違える。
- 左右のスイープでマイクを動かさない。間に動かすと、測定された左右差にはその移動分が混ざる。
スイープを測る
左スピーカーだけで一回、右スピーカーだけで一回測り、後から区別できる名前を付ける。左右同時に鳴らした測定は別物であり、得るものが少ない。二つの到来音が干渉し、スピーカー間のレベル差や設置位置の差が、差として現れずに合成の中に隠れてしまう。
- スイープ長は256kまたは512k。長いスイープはS/N比を稼ぐ。低域と残響時間の信頼性はそこに依存している。代償は一回あたり数秒である。
- 測定範囲は20Hzから20kHzまで全域。狭い範囲だけを書き出すと解析側の材料が足りず、このサイトは数オクターブに満たないファイルを受け付けない。
- 各チャンネルをもう一度測って重ねる。同じ位置から同じスピーカーを測った二本は重なるはずである。重ならないなら、何かが動いたか、何かが鳴っていた。
テキストファイルを書き出す
書き出しは二種類。二つ目は必須ではないが、レポートで言えることが変わる。
- 1.周波数特性。測定を選択し平滑化をNoneにした状態で、FileからExport、そしてExport measurement as textを選ぶ。左の測定と右の測定でそれぞれ一回ずつ行う。各行に周波数、レベル、位相角が並んだファイルができる。
- 2.減衰特性。RT60タブを開き、Export、そしてExport RT60 data as textを選ぶ。こちらは1/3オクターブバンドごとに一行、減衰時間が並んだ数十行のファイルになる。
どちらもテキストエディタで開いて読める平文である。解析に必要なのは周波数特性のほうで、残響時間の書き出しがあると、吸音材をどこに置くかだけでなく、どれだけの量が要るかまで算出できるようになる。
グラフが読めなくなる六つのミス
- 校正ファイルを読み込んでいない。帯域の両端が数デシベルずれ、上端と下端に実在しない問題が生まれる。
- マイクを天井に向けたまま0度用のファイルを読み込んでいる。最高域の二オクターブに広い誤差が乗り、高域の死んだ部屋のように見える。
- 平滑化を切り忘れている。探しているはずの鋭いピークが、目に入る前に均されている。
- 左右を同時に鳴らして測っている。場所によって左右が打ち消し合い、本来いちばん直しやすい問題が見えなくなる。
- マイクが耳の高さではなくソファの背もたれの上にある。実際に聴く位置から半メートル離れた特性を読むことになる。数百Hzより上では、それは別の部屋である。
- 部屋の中で何かが鳴っていた。ノイズフロアが上がり、まず残響時間の帯域が空になる。
どれも一度知ってしまえば分かりにくいものではなく、それぞれグラフに固有の形を残す。厄介なのは、このうち三つが部屋の問題そっくりの形を残すことだ。そして多くの人は、それを吸音材を買って直そうとする。